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2019.10.02

一本の枝から始まった物語〜「五一わいん」代表・林幹雄さんインタビュー

一本の枝から始まった物語〜「五一わいん」代表・林幹雄さんインタビュー


ワインシティとも言われる塩尻のワインについて探るべく、ライターのイナバが現地取材を敢行。
塩尻のワインの歴史や美味しさの秘密を求めていざ出発です!





世界が認めた桔梗ヶ原メルローの生みの親「五一わいん」




塩尻駅を降りて向かった先は、駅から約2㎞、海抜700mの丘陵地帯「桔梗ヶ原(ききょうがはら)」と呼ばれるエリアに位置する五一わいん(林農園)さん。


開園100年超の老舗ワイナリー。ここに数々の伝説と物語が眠っていた…..!


塩尻でブドウ栽培が始まったのは1890(明治23)年。なんと130年も前なんですね。その7年後、1897(明治30)年にはワイン醸造がスタートしました。当時は、ナイアガラやコンコードなどのアメリカ系品種が主だったそう。


敷地内にはブドウの甘〜い香りが漂います。



「親父がここに農園を開いた当初は、ブドウをはじめナシやリンゴ、サクランボなどあらゆる果樹の栽培をしていたんですよ」と話すのは、五一わいん代表の林 幹雄さん。



今年90歳になる林幹雄さん。穏やかで優しい雰囲気を纏い、何よりとってもお元気!



創業者であり、幹雄さんのお父様である林 五一さんは、1911(明治44)年に桔梗ヶ原にぶどうを入植。1919(大正8)年に、独学でワインの醸造を開始します。これが結構売れたそう! しかし戦争の煽りを受けて、戦後、ワイン産業は低迷。終戦から5年ほどは、日本中のワイナリーが開店休業状態だったそう。



そんな折、1951(昭和26)年に、幹雄さんと父・五一さんは大阪、山梨、山形へブドウ栽培の視察旅行へ出かけます。訪問先の一つ、山形県にある小さな農園で、運命的な出会いを果たすのです!


「デラウェア一筋の場所だったんだけど、片隅に一本だけメルローの木が植わっていました。結構寒い土地なのに枯れずにたくさん実がつくことを教えてもらって。それで、枝を2,3本持ち帰らせてもらったんです。ただ、その農園の名前が分からなくて(笑)。親父に聞いておけばよかったなって今でも思うよ」


当時は「土壌の性質と冷涼な気候から、ヨーロッパ系品種は一切育たない」と言われていた塩尻。ゆえに、寒さに強く生食も兼ねたアメリカ系品種が広く栽培されていました。しかし、土壌条件がよく似た山形で育つのなら….!と、ヨーロッパ系品種であるメルローの枝を台木に接いで、幹雄さんは大切に育てました。


「そしたらうまく実がついたんです」



これが、林農園にある県下最古のメルローの古木! 今もなお元気に実らせていることにビックリ。
園内は見学自由です。一見の価値ありですよ!





幾多の困難を乗り越えて世界に羽ばたく!




2年目には一房、二房と実をつけ、つまんで食べるとコンコードなどとは全く違う独特な香りがしたそう。その後、醸造したワインを父・五一さんと共に飲んで「これはいいかもしれないぞ」とメルローの可能性を確信していくことになります。


「木の中央部に見える隙間は凍害により細胞が死滅したことでできたもの。昔は非常に寒くて栽培が困難であった証なんですよ」



が、しかし!



順調だった矢先、「根頭がんしゅ病」や凍害が相次いで発生。今まで元気だった木が、3年目に急に枯れてしまう事態に陥りました。根頭がんしゅ病は、当時まだあまり知られていない木の病気で、農業試験場の先生方でもよく分からなかったそう。その後幹雄さんは、凍害が発病の誘因となることを知り、藁を棚部まで手作業で巻きつけたりと、試行錯誤をしながら栽培方法の改良を重ねます。



「当時、藁もなかなか手に入らなくてね、価格も高かったんです。でも枯らしちゃ困ると思って必死にやりましたよ」



「藁を巻きつける作業、これが大変だった….! こんなことはやりきれんと思って他の方法を模索したんですよ」



「台木に使っていたアメリカ系品種は免疫があるため根頭がんしゅ病にならないという事実を活用して、それを伸ばして高所に接いだらどうだろうと思ってやってみたんです。そしたらこれが大成功高接ぎした木は1本も枯れなかった!!」



これらの栽培方法を周辺農家に共有したものの、接ぎ木の活着率があまり良くなかったことからメルローの栽培に消極的な農家も増えていったそう。しかし、幹雄さんは諦めませんでした。



次から次へと困難に襲われるなか、一筋の光がさします。それが、温暖化です。



1985(昭和60)年頃から始まった温暖化により凍害が出なくなり、メルローの栽培が安定。さらに、1989(平成元)年には、桔梗ヶ原産メルローを使ってシャトー・メルシャンが作ったワイン「シャトー・メルシャン信州桔梗ヶ原メルロー1985」が、リュブリアーナ国際ワインコンクールで大金賞を受賞!!!!


「とてつもない賞を獲っちゃったの。それを聞いて、私も自分が獲ったくらい本当にうれしかった」


話を聞いていて涙が出そうになりました






シャトー・メルシャンと幹雄さん





話は少し遡ります。


戦後、砂糖が輸入できるようになってからは、砂糖と香料、色素、アルコールを使って作る人工的な甘口ワイン「甘味ブドウ酒」が一世を風靡しました。しかし、およそ20年後には売れなくなり、原料であったコンコードとナイアガラの栽培が危機に瀕します。


そこで、大黒葡萄酒(現・シャトー・メルシャン)の工場長だった浅井昭吾氏に助言したのが、すでにメルローの栽培に着手していた幹雄さんでした。


「浅井さんにメルローを勧めたら『これはいい』と。大黒葡萄酒傘下の農家に、メルローへの改植を呼びかけたんです。賛同した農家に計6000本ほどを植え、塩尻が一挙にメルローの産地になっちゃった。試験栽培など無しにいきなり6000本も植えたって聞いたから困ったなぁとも思ったけど、もう植えちゃったっていうからね。栽培指導をさせてもらいました」


1本の木から始まったメルローが、世界の扉を開く──。たゆまぬ努力と諦めない信念によって実現した、そんなストーリーに胸が熱くなりました。まるで『プロジェクトX〜挑戦者たち〜』を見ているみたいだ!!



今やメルローの一大産地となった塩尻。それは、この1本の木と林さん親子の努力から始まった





7ヘクタールの農園は見渡す限りブドウだらけ!





栽培から醸造まで一貫して手がけ、さらなる挑戦を続ける五一わいん。現在、ワイナリーに併設された7ヘクタールほどの自社農園では、メルローをはじめシャルドネやシラーなどのワイン専用品種のブドウが15種ほど栽培されています。農園は、見学自由ですよ! ぜひ遊びに行ってみて欲しいです!



見渡す限りのブドウ畑!壮観! オーストラリアの「スマート・マイヨルガー仕立て」方式を元にした「ハヤシ・スマート方式」で栽培。それぞれの支枝から新芽が伸びています


こちらは「垣根仕立て」で栽培されているブドウ。


ワイナリーでは自社農園のほか、約100軒の契約農家で栽培されたブドウを原料として様々なタイプのワインを醸造しています


売店も併設。イナバは甘い香り&スッキリ飲みやすい「ナイヤガラ」、「しぼったままのぶどうじゅうす」のコンコードとナイヤガラを買って帰りました〜。これはワイン初心者にもおすすめです、本当に美味しい!!!!!!!!!!!




11月9日に東京・目黒のホテル雅叙園で開催される「SHIOJIRI GRAND WINE PARTY TOKYO 2019」では、もちろん五一わいんも並びますよ。塩尻にメルローが生まれた背景を知った上で味わうワインはまた格別。

ひたむきにブドウと向き合い、技術や知識を決してひとり占めせず、共有して共生していこうとされている姿勢に、もはや学ぶことしかありませんでした。貴重なお話を聞かせていただき、本当にありがとうございました! また来ます!!



塩尻のレジェンド林幹雄さんと、恐縮ながらハイチーズ!




五一わいん(林農園)


住所/長野県塩尻市宗賀1298-170
TEl/0263-52-0059(事務所)・0263-52-7911(売店)
営業時間/8:30〜17:00
定休日/土・日曜、祝祭日、年末年始(事務所)・お盆、年末年始(売店)
備考/工場内の見学はできないが、ブドウ畑は自由に見学することができる
↓地図はこちら

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